【停電ドキュメント65時間】千葉地域世話人・林 彰一さんによる台風15号被害と対応報告

コラム
2019.09.16
leadaccumulator

非常用電源となった再生鉛蓄電池給電システム

このたびの台風15号により被害を受けられました皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。

大きな被害を受けた千葉県は、多くの太陽光発電ユーザーが会員としてPV-Netに参加している地域です。その一人、袖ケ浦市に別宅を構えている千葉地域交流会世話人の林 彰一さんより、周辺の建物被害や約65時間にわたった大規模停電時の対応について、当時の様子を伝えるレポートが届きました。本来は関係者に向けたものでしたが、災害時の再エネ活用において、示唆に富んだ内容となっていることから紹介させていただきます(株式会社エコロジア「【緊急レポート】台風15号と弊社の対応」より転載)。

またPV-Netでは9月17日より、ソーラー発電機器を持参のうえ、停電の続く被災地域を訪れ、連絡が取れない会員への安否確認と電源供給、通電火災等の二次災害の防止措置などを行います。つきましては、これら支援活動に係る費用(バッテリー、その他救援物資・資材等)について、ご寄付をお願いできましたら幸いです。

  • PV-Netへのご寄付は寄付金控除の対象となります。
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はじめに

千葉地域交流会世話人の林です。

現在、千葉県袖ケ浦市におります私の交流範囲では、台風15号の暴風被害とその後の大停電で、かなり深刻な影響を受けています。今晩(9月12日)になってやっと涼しくなり、一息つけた感じです。

本来は、現地からのシリアスな苦境を訴えるレポートを期待されるものかもしれませんが、かなりうまく停電対応できたという私の実体験を、備忘録として書き留めましたので、勝手ながら皆さまに共有させていただきます。本レポートは千葉地域交流会世話人の間でお互いの安否確認情報交換している一環のものです。長文でまとまりがないのですが、暇なおり、気が向いたらお読みください。

(9月12日22時30分記)

 混乱の木更津・袖ヶ浦界隈

袖ケ浦の当地の停電復旧は9月11日夜9時半でした。シャットダウンが9月9日の3時55分(電力遠隔監視装置による記録)でしたので、65時間半ほどのブラックアウトでした。木更津の弊社・エコロジア第二太陽光発電所はまだ停電継続中です。水圧は弱まったものの、断水はありませんでした。ガスはプロパンで乾電池着火式なのでガスレンジは通常使用できました。停電2日目からドコモの携帯電話の電波は非常に不安定で、停電解消時より徐々に回復していったような状況でした。

台風通過時は東京に薬を取りに戻っていて、袖ケ浦にはおりませんでした。9日正午にアクアラインが再開されたため袖ケ浦に戻ろうとしたものの、湾岸線からのルートが閉鎖。仕方なく川崎大師方面から浮島入口を目指すも3時間以上の大渋滞!

夕刻になりようやく木更津、袖ケ浦の自社発電所にたどり着き、目視点検ができました。フェンスがぐにゃりと曲げられたり、スチール収納庫がひしゃげて扉が吹き飛び、中身が散乱したり、トタン板の引きちぎれたようなものなど他所からの飛散物があちこちにあり、片づけに時間がかかりました。当然、東電停電のため発電所のパワーコンディショナも停止。電気的な被害があったのかはわからないものの、外観目視では問題はなさそうだったので、袖ケ浦の家に戻りました。

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エコロジア第一太陽光発電所の設備収納庫の扉が左に3メートルほど飛散した

途中の信号は全部無灯。交通整理の警察官なんていません。交差点ではみんな一旦停止し、譲り合って事故のないよう走行していました。信号機は、どれも本来の方向とは違った方に向いて、信号灯の上のカバーフードも引きちぎれているのにはショックを受けました。

信号や電柱も、柱という柱は斜めに傾き、家々の屋根やビニールハウスは破壊しつくされ、木更津・袖ケ浦界隈は壮絶な光景でした。弊社発電所の気象観測器では、台風の中心が通過後の4時4分南南西の風、瞬間最大風速46m/s、平均風速でも35m/sを記録していましたので、このレベルの暴風にやられたものと思われます(ちなみに発電所の設計上の風圧荷重計算上、法令での当地基準風速は38m/sです)。

家の方は、太陽電池の載っている母屋については瓦も飛ぶことなく無事でしたが、納屋の方が一部屋根が欠け、トタン板のサイディングが東側を中心に吹き飛び、納屋の中の道具類が浸水していました。暗くなってきたので、調査、片づけは後回しにして、非常用電源のセットアップにかかりました。

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袖ヶ浦のエコロジアハウス永地。左側が母屋で右側が別棟。別棟の屋根と壁面が損壊

袖ケ浦のエコロジアハウスには、以前、千葉地域交流会主催のセミナーでご紹介したEV/PHV用の太陽光・再生鉛蓄電池充電システム(12kWh、別棟の納屋に設置)があります。別途備えていた2500Wのインバータを接続し、ドラムコードリールで電気を玄関経由で、ダイニングに引き込み、ここを宅内避難所に定めました。結局この電力で、停電が復旧するまでの65時間ほどを、ほぼ通常の生活を営むことができました。ダイニングのエアコンは点けっぱなし、テレビ、冷蔵庫、10WのLED投光器照明はドラムリールにつないだ延長コードでそれぞれ配線し直して使えました。これによりダイニングと隣り合うリビングルームのソファで、涼みながら寝ることができました。

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非常用電源使用の停電初日夜のダイニングの様子(10WのLED投光器で天井照明)

 自立運転・蓄電池による電源確保で地域の避難場所に

2日目からは分電盤の主幹ブレーカを落とし、昼間は住宅用太陽光発電の自立運転コンセントからの電力で、エアコン、冷蔵庫用のベースロード電力をとり、鉛蓄電池は独立の太陽電池からの充電にいそしみ、夜に備えるという切り替えを行いました。

自立運転のコンセントや蓄電池電源につながっているドラムリールのコンセントとダイニングルームの壁面コンセントを、両端がオス=オスの自作ケーブルで接続し、宅内配線そのものを利用できるようにしました。(コンセントの穴がある方をメス、差し込む方の金属端子板2枚が突き出ているプラグをオスと表現)

これにより、エアコンも冷蔵庫も元々接続していたコンセントに差し込んだままで使えます。プラグがない外置きの井戸水ポンプまで使用可能となりました。このケーブルプラグを、系統が違う壁面コンセントにつなぎかえることで、別室のプロパン湯沸かし器、洗濯機などまで使えるようになりました。この自作ケーブルでの宅内配線利用は絶大な効果がありました。ドラムリールにつないで延長コードで各家電製品のプラグを接続するのにも、長さや数に限界があったからです。

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(左)ダイニングに引き込んだ蓄電池系統と太陽光発電自立運転系統の2つのドラムリール (右)両端がオス=オスの自作ケーブル

ご承知のように単相3線式の分電盤は、宅内に中性線を挟んで100Vの配線が2系統で来ています。分電盤内の上下2系統のうち、どの部屋、どの器具がどちらの系統に属するのかきちんと表示、把握できていれば、それをもとに予備電源と、どの宅内コンセントをつなげば良いかがわかるわけです。以前から、こうやればうまくいくのではないかと想定し、自作ケーブルを用意していましたが、それが実際に機能することが今回の被災で実証できました。非常事態で主幹ブレーカを確実にオフにして運用し、自己責任で行えればよいのではないかと考えます。(後日追記:主幹ブレーカをオフにする理由は、屋外で復旧工事をしている作業員を感電させ、死傷事故につながる危険があるからです。このことの重要性をよく認識してください)

日中の屋外片づけ修理作業で汗だくになった後に温水でシャワーが浴びれたこと、汚れた作業着や下着を洗濯できたこと、熱帯夜に涼しい部屋で寝れたことは何よりありがたかったです。

エアコンが効いているリビンクのスペースで十数人は収容可能という環境を確保できたことで、2日目の午前中にはご近所さん、地区の顔役の方を訪れ、拙宅に冷房があること、携帯電話などの充電ができることを地区の連絡網で知らせてほしいとお願いに行きました。遠慮されて女性陣は来られませんでしたが、顔なじみの男性陣は携帯電話の充電がてら涼みに来てくれました。

また、屋根貸しで車庫に太陽電池が載っている方が「非常時に自立運転で電気を使っていいといわれているがどうすればいいかわからない」と相談に来られました。現場に行き、自立運転に切り替えてあげて、無事、業務用冷凍庫に通電できたことで大変喜ばれました。

 停電3日目、そして復旧へ

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(左)住宅用太陽光発電の自立運転コンセント (右)発電所に備えた非常時電源コンセント

停電3日目は、木更津の発電所のフェンスに設置しておいた非常時電源コンセント(遠隔監視装置用の太陽電池蓄電池独立電源からの常時給電)が使えるかと、懇意にしているご近所さんから電話をもらいました。確認したところ問題なく通電していたので、携帯電話を2台、満充電にすることができ、とても喜んでもらえました。こういう時のために備えていた機能がちゃんと発揮できて、胸をなでおろす思いです。

大勢の周囲のみなさんがお困りのところ不謹慎かもしれませんが、隣組の男衆が「今晩、停電が解消しないならやってられないので、林さんとこで飲み会しよう!」ということで、ストックしていた冷たいビールを大放出して宴会を行いました。理事で静岡地域交流会の伊藤さんも、自身の茨城の発電所の被害確認に向かう途中に寄ってくれて、一緒に楽しく過ごしました。テレビニュースを見ながら、当分電気は無理そうだねと言っているところ、夜9時半ごろメンバーの奥様から、「たった今、電気が復活したわよ」と携帯に連絡が入り、「やった!」の一言で突然解散となった次第です。当方は、非常電源で普段どおりの生活環境だったので、外部から言ってもらわなければ、復旧に気づくこともなかったでしょう。非常時電源系のコードをすべて取り外して、ソーラーランタンの明かりで、分電盤の主幹ブレーカ、太陽光ブレーカを「入」にして照明が点灯。無事復電を確認できました。

今回使用したのは再生鉛蓄電池だけで、プリウスPHVの実容量約6kWhのリチウムイオンバッテリーの出番はありませんでした。耐久生活が長引いて、悪天候が続けば必要になったと思われます。鉛蓄電池は1日だいたい5kWhくらいを消費しましたが、天気がよかったので、減った分をちょうど太陽電池で充電でき、それを繰り返した計算です。

エコロジア第一発電所は近くなので復旧エリアに入り、今朝から無事発電復帰したことが確認できました。もちろん住宅太陽光も売電モードに復帰。一方、木更津の第二発電所エリアは本日も停電復旧できていないため、他のご近所さんにも口コミで前述の非常時電源コンセントのことが伝わり、近所の農家さんからお礼に採れたてのキュウリなどをいただくなどありがたい交流ができました。

皆さんのお困りの共通項は、冷蔵庫が使えずに食材が駄目になっていくこと、情報取得や連絡手段の携帯の電池が切れてしまい孤立すること、充電しようにも公的施設の充電場所はすごく混雑していること、何より暑くて寝られないことでした。商店も、飲食店も、ガソリンスタンドも全く営業できないというのもこれまで経験したことのない事態です。

地球温暖化、気候変動は、いまや「気候危機」と名前が変わっています。そしてそれは近い将来に到来するかもしれないという悠長なものではなく、すでにその時代に突入してしまっていることを今回再認識させられました。電気が長時間ない生活がこれほど不自由で、人命への危険をもたらすことを考えれば、せめて10軒に1軒くらいは太陽光発電を中心とした非常時電源の確保と、そのシェアをコミュニティとして図ることで、随分と苦しみが減るのではないかと感じます。蓄電池付き冷蔵庫なんてものも流行るかもしれません。土台に大容量リチウムイオンバッテリー。3日間分約5kWh強の電力量、500Wインバータ付きで外部臨時給電可なんていうスペックはどうでしょう? 高くて売れない?

最後に。家中からかき集めた延長コードコンセント、そのうちの1つが古いやつで、使用中に一部の差込口の裏側が発熱し焦げました。匂いで気が付いたからよかったものの発火の可能性もありました。電気は危険物であることを肝に銘じる必要があります。

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焦げた電源タップ

PV-Net千葉地域交流会世話人 林 彰一

<今回住宅の非常時電源で使えた電気機器>
・冷蔵庫(連続運転)
・エアコン(ダイニング・リビング締切常時運転)
・10WのLED投光器(夜間天井を照明)
・インターネット用ルーター(常時通電)
(以上がベースロード[常時負荷]約400W)

・液晶テレビ
・ノートPC
・シーリングLED照明
・ドラム式洗濯乾燥機
・炊飯器
・電子レンジ
・プロパン用温水器
・井戸水ポンプ
・携帯スマホ充電器

<使用した非常時電源>
①EV/PHV用太陽電池鉛蓄電池充電システム
(太陽電池4枚計1.19kW、再生蓄電池定格容量12kWh、2500Wインバータ[中国製3万円、60時間以上連続運転しても問題なし]、ドラムリール

②住宅用太陽光発電システム(4.4kW)
パワコン自立運転(日中のみ最大1500W、ベースロード担当)